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マイスタージンガー@新国立劇場 [劇場通い]

新国立劇場シーズン開幕公演、ワーグナー 「ニュルンベルクのマイスタージンガー」

大満足。ほんとにおもしろかったです。

さんざん聴いている録音があるからでしょう、その刷り込みが相当で、前奏曲のはじまりでは、多少違和感があって、ちょっと乗りにくかったですが、次第に引き込まれました。

新国立劇場のホームページの舞台写真やビデオ・クリップから、全然期待しないで、出かけましたが、びっくり仰天のうれしい予想外でした。写真は当てにならないです。もっとも、いつも感じるのですが、あの舞台写真は、概して下手というか、よくないと思います。

思うに、おもしろさは、やはり演出から来たのではないでしょうか。さすがにヴァイクル、それこそだてにザックス歌手といわれてきたわけじゃないってよくわかりました。いわゆる目新しい演出ではないけど、躍動感があって、新鮮。実によく演出されていると思いました。特に歌手の動かし方や感情表現のさせ方が巧かったのだと思います。

たとえば、もしかしたら声楽的に多少難ありかも・・と思うワルター、巧くポイントを押さえた歌唱をしていたせいだと思うのですが、情熱的で奔放、前向きで積極的で、ちょっと高慢ちきな天才青年的性格が非常によく出ていました。オペラグラスで見るとちょっと興醒め(歌う表情が崩れるというか、あまり美しくない)なんですけど、普通に見るには、なかなかの好青年、動作も決まっているし、表情もよく伝わって、今までに体験した複数の映像&実演(と言っても一度だけですけど)の中で、最高!のワルターでした。舞台姿の全体的印象は、アラーニャ・タイプというところ。映画俳優なら、ダスティン・ホフマンかしら。(どちらのファンにも怒られるかも・・ですが)
エレクトラのエギスト役で目をつけた私の勘に狂いはなかったようです。

エーファもよかったです。すらっと背が高い(ほんとに高い、その点、ワルターとのバランスは、これもまるで、ゲオルギューとアラーニャってところでした)、それに私が歌手には、そして、大抵の役には、もちろんこの役にも、必需品だと思っている、気品がありました。良家の娘らしい育ちの良さ、そしてちょっとわがままな可愛らしさも。ザックスの煮え切らない態度に腹を立てて、彼を押し倒して馬乗りになってだだをこねるところ、とても印象的でした。後の、人間としての成長ぶりとの対比が際立って、感動が深まります。

衣装も、前半の赤いドレス、三幕の白いドレス、どちらも質感のある素敵な布で高級感があったし、とても似合ってほんとに奇麗でした。立ち姿も動く姿も決まっていて美しかったです。声は、多少太めかなと思いましたが、この役に合わないってことはなかったです。今回のワルターと相性良かったと思います。

ザックスは、立派な体格ながら、肥満とは全く縁のない歌手で、いかにも頼りがいも包容力もある良識人といった雰囲気を醸して、独自のザックスだったと思います。ヴァイクルがずいぶん熱心に指導したんだろうなって思う瞬間がありました。分別あるほんとうの大人であるがゆえに、悩みもつきないザックスがよく表現されてました。だれもに好かれ、尊敬される人物として、素直に納得できます。

ポーグナー、フィデリオでもロッコでしたが、これもこの役の性格がよくわかって、ぴったりでした。エーファの父親って、なるほどこういう人なんだって、思えます。その行き方、考え方、納得でした。

ベックメッサーは、最高でした。なんともおもしろくて、一幕から、もう大声で笑いたかったけどそうもいかないので、抑えるのにかなり苦労しました。三幕のはちゃめちゃな歌が、これほどおもしろくて、吹き出しそうになるのをこらえたのは、全く初めての体験です。かけねなしの役者。立派な堂々とした体格、性格の悪さも十分というところですが、愛嬌もあって、第三者的には憎めない感じ・・・ 
 
以上、三人のマイスターはみなさん体格の良いドイツ人(念のため、肥満とは無縁)、あとは日本人歌手でしたが、個性的な扮装(特に髪型)、演技的にもなかなかで、上記三人と、全然違和感なかったです。マイスターたちに関しては、人種の違いがまったくといっていいほど気になりませんでした。その他大勢の合唱団に関しては、違和感がないと言うとうそになりますが、仕方ないことですから、目をつぶりました。歌的には問題なかったです。

ダーヴィット、もう新国専属と言ってもいいほどの、吉田さんでしたが、ほんとびっくりするほどよかったです。声もダーヴィットにふさわしい透明感があって、聴きやすいし、演技も、多少臭いところゼロとは言いませんが、99%、自然でよかったです。一幕の長々しい講義、全然退屈しませんでした。これはすごいことじゃないかと思います。オペラグラスを使わなければ、丸顔もすっきり見えて、なかなかの男前でしたし。このダーヴィッド&レーネのカップルも女性のほうが大きかったのもご愛嬌のうちでした。小山さんのレーネは、まあ、それほど印象的でもなかったけど、こんなものでしょう。あの役は。この役が突出してすばらしかったなんてことだったら、あんまりいい上演とは言えないんじゃないでしょうか。

フィナーレもイヤミがなくて、普遍的な主張になっていて、とても気持ちがよかったです。これはこの演出全体から感じ取れました。たとえ民族色の強い、悪質な国家主義や全体主義に利用されてしまう内容でも、本来的には、人類の普遍的な理想であって、それを素直に表現できるし、どんな立場で観ても違和感がないということをはっきり示してたと思います。字幕もけっこうまじめに眺めましたが、ワーグナーの歌詞の深い意味、そして、人類全体の人間的な問題として、十二分に通じる内容、しかも非常にまじめで、心から伝統や民族性を大切にしながらも、現代においてさえ、反権威主義的で革新的だということを再確認しました。その歌詞がほんとに舞台で実現されていると感じました。

フィナーレ、幕が降りる寸前、一旦は逃げ出していたベックメッサーが、記録係の小黒板を手にふらふらと登場、手を取り合うワルター&エヴァのそばまでやってきて、黒板を掲げると、そこに、Nein! の文字が。マイスターたちにまたにらまれて、こそこそ退場。これで、また大笑いで幕。しゃれてる!と思いました。

しゃれと言えば、夜警はいつも酒瓶片手に酔っぱらっているのですが、一幕から、酔っぱらった通行人で登場、三幕の祭りの場でもよっぱらってふらふらしてました。歌手は日本人のベテランさん。背丈は小さいけど、ちょっと小太りで、明らかにヴァイクルか?ってメークでした。これは、ヴァイクルのこのオペラでのデビューが夜警の役だったので、ちょっと楽しんでみたのだそうです。これは、内部関係者が演出家から直接仕入れた情報だということです。

ワーグナーの舞台を観るのははじめて、ワーグナーは好きじゃないから、寝ちゃうかもしれないと言っていた同行者も含めて、一睡もせず、舞台に集中、大声で笑いたいのをこらえつつの六時間(休憩含む)でした。私としては、連日の長時間オペラで、さすがに三幕ではお尻が痛くなりましたが、気分は最高の大満足でした。

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オデュッセウス

こちらでは初めまして、オデュッセウス@『小さな音楽家たち』です。オデュッセウスもこの公演を観ました。ほぼ同様の感想を持ちました。『小さな音楽家たち』にはちょっと辛口な感想記(特に演出について)を掲載しましたが、とにかく感激した公演です。

明後日はミュンヘン・オペラ『マイスタージンガー』です。本家の公演、楽しみです。
by オデュッセウス (2005-09-30 22:30) 

euridice

オデュッセウスさん
こんにちは。>辛口な感想 読ませていただきました。この作品、個々人それぞれの思い入れが強いようですし、歴史的にも垢まみれにされてるようですから、見方も千差万別でしょうね。ミュンヘンにもいらっしゃるんですね。感想、楽しみにしてます^^!
by euridice (2005-10-01 08:38) 

佐々木真樹

私はワグナーに限らず,オペラを生で観たことがありません。(あ,1度だけ「フィガロの結婚」を日本語で歌う方達のステージで観たかな。)
そっか~,当たり前ですが「声」だけではなくそれを出す「器」と「衣装」も楽しめるのですね。全部が全部美味ってわけにはいかないけれど(某所の「トリスタンとイゾルデ」の写真は「あんまりだわっ!」ですけれど)やはり生で観たいなぁ・・・     
by 佐々木真樹 (2005-10-01 09:43) 

あやかしのとら

ウラヤマシカ!私も逝きたかったです。

(よきにつけ悪しきつけ)イデオロギーの持込を持ってくることによってセンセーションを引っ張り出そうとする演出ではなくて良かったですね。
 名歌手って素直な人間性の表現で胡散臭い物を持って来て欲しくありませんもの。
 私が日本で観たのはN響ホールで字幕が初めて導入されたホールでしたので楽しく観劇できました。
 
by あやかしのとら (2005-10-01 11:28) 

euridice

佐々木真樹さん
私も生のオペラを見るようになったのは、ずいぶん後です。最初は日本語で歌ってた「ドン・ジョヴァンニ」でした。

あやかしのとらさん
そうですね。素直な演出で楽しめてよかったです。
by euridice (2005-10-01 23:30) 

ヴァラリン

…プチ復活(^。^;
しゃべりたいことはいっぱいあるんですけど(笑)とりあえず先にTB&リンクだけ済ませておきますね。

>普遍的な主張になっていて、とても気持ちがよかったです。これはこの演出全体から感じ取れました。

こういうのって…いいですよね。
ハンブルクでのコンヴィチュニー演出に代表される、ドイツ国内での新しい試みとはまた違う切り口から、ヴァイクルは演出してみたかったんでしょうね。
新国のレパートリーに定着することを希望します。勿論、映像でも見てみたいですね(^^!
by ヴァラリン (2005-10-01 23:40) 

ビュッヒライン

こんばんは。私は公演初日に行きました。実演であれほど素晴らしいザックスを観れたのは本当に幸せでした。ベックメッサーも最高に巧かったですし。
by ビュッヒライン (2005-10-02 01:29) 

euridice

ヴァラリンさん
具合はいかが? TB&リンク、ありがとうございます。

ビュッヒラインさんもいらっしゃったんですね^^!
コメント、うれしいです。
by euridice (2005-10-02 07:44) 

TARO

伝統的な演出は日本かアメリカでというのが、歌手&スタッフ・サイドにも浸透してるんでしょうか。ヴァイクルのザックスは昔、来日の時に聞きましたが、まさか日本で演出をするとは思いませんでした。

ところで歌手と演出に対する賞賛の声は方々で聞きますが、指揮者はどうだったんでしょう?かの2幕版「ルル」を振った方ですよね。
by TARO (2005-10-02 13:14) 

euridice

100%伝統的演出かどうかはともかくとして・・ 退屈じゃなかったから、古くさいという意味での伝統的演出じゃなくて、とっても新鮮な新しい感じの演出だったんじゃないかしら・・ なんて^^;

前奏曲がはじまった瞬間は、ちょっとええ〜〜っーー?!て感じがしましたけど、耳慣れた演奏と違うからかなって・・・ どの辺からかしら、気にならなくなりました。舞台上の動きとの違和感もなくて、気持ちよかったです。

指揮に一家言ある方々の感想はどうなのかしら・・ ミュンヘン来日のほうの指揮については、批判的な意見ばかり目につきますが・・・
by euridice (2005-10-02 13:48) 

神木

TBありがとうございました。
私も事前に新国のHPで映像を見て、期待せずに行きました。
でも、それが覆って良かったです。
by 神木 (2005-10-02 17:52) 

Mimi

本日の千秋楽,行ってまいりました.本当に良かったです!!
前奏曲,早!という感じでしたが途中からは気にならなくなりました.
ザックスとベックメッサー,ポーグナーは最高.ベックメッサーより歌が下手なワルターってどうよ,とちょっと思いましたが,声は柔らかい感じで好みの声質だったのでそこは目をつぶることにします.ただ優勝の歌はもっとたっぷりと聴かせて欲しかったなあ.エヴァのハルテロスは本当にきれいな人ですねえ.モデルさんみたい.声はもうちょっとかわいい系の方が好みかも.吉田さんはカッシオとかペッペとかいっぱい聴いてますが,この役が一番はまっていると思いました.
演出,良かったと思います.歌手を後ろ向きで歌わせたりせず,舞台上も木でまとめていたので音が吸われず,歌手の方々は演じやすかったのではないかしら.(ただベックメッサーは大変だったと思います.)ワーグナーっていいなあって心から思わせてくれる,そんな公演でした.
by Mimi (2005-10-02 22:47) 

euridice

神木さん、Mimiさん
コメント、うれしいです。新国立劇場のマイスタージンガー、大勢の方が、満足されたようです。ほんとにいい舞台でしたね。ワーグナーは長いし・・ちょっとね・・という人たちも退屈しないで楽しんだみたいですし。
by euridice (2005-10-03 06:14) 

しば

ご無沙汰しております。こちらでははじめまして・・・ですね。(;^ω^)
新国マイスター、私も行きましたが楽しかったです。演出の重要性というのをこの舞台をみながらしみじみ感じました。いくら歌手やオケがよくても演出がよくないと面白みが半減してしまいますね。今回は最高でした。ヴァイクルさんブラヴォー!です。ベックメッサーさんが個人的にヒットでした(私も笑いたいのをこらえるのが大変でした)。再公演を希望したいですね。
by しば (2005-10-03 23:51) 

euridice

しばさん
いらっしゃいませ! 
シーズン開幕が大当たり公演になって、縁起がいいです^^!
もう一度ぐらい行きたかったですけど、お隣じゃないですから、そう簡単には時間がとれませんし、残念でした。
再演、あるといいですね。
by euridice (2005-10-04 07:14) 

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新国マイスター観劇記UP(更新履歴兼日記 2005-10-05 09:55)

とはいっても、例のごとくミーハー観劇記でございます。レベルの低さに耐える自信のある方、どうぞ(^_^;) また、ネタバレが大量に含まれておりますので、これから新国でマイスターをごらんになる予定の方はご注意ください。どちらかといえば、ごらんになった後のほうがよろ

ヴァイクル演出『ニュルンベルクのマイスタージンガー』(keyakiのメモ、メモ......... 2005-10-04 00:42)

見てきました!ヴァランシエンヌさんのブログの『ヴァランシエンヌ的マイスタージンガーの楽しみ その1 その2』を読んで行ったおかげでとても楽しめました。 あっというまの6時間。初『マイスタージンガー』には最高の演出でした。それぞれのキャラクターが明確に描かれていましたし、主要キャストの見…[続く]

新国立劇場『ニュルンベルクのマイスタージンガー』(09/23)(オペラで世間話 2005-10-01 23:33)

【2005/2006シーズン開幕】  新国立劇場2005/2006シーズンの開幕公演となった今回のオペラで、最も注目されたのは、ザックス歌いとして名高いベルント・ヴァイクルが演出をする、ということではなかったでしょうか。経験が浅く、実力が未知数である演出家を、どうして招聘するのだろうかと…[続く]

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