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ドン・ジョヴァンニ  [劇場通い]

モーツァルト:ドン・ジョヴァンニ
ダニエル・バレンボイム指揮、
ベルリン国立歌劇場 東京公演
トーマス・ラングホフ演出
東京文化会館1L3_1

ドン・ジョヴァンニ:ペーター・マッティ
レポレッロ:ハンノ・ミューラー=ブラッハマン
騎士長:クリストフ・フィッシェッサー
ドンナ・アンナ:アンナ・サムイル
ドン・オッターヴィオ:ハヴォル・ブレスリク
ドンナ・エルヴィーラ:アンネッテ・ダッシュ
ツェルリーナ:シルヴィア・シュヴァルツ
マゼット:アレクサンダー・ヴィノグラドフ

ダニエル・バレンボイムを生で聴こうという気になって、例のごとく急遽出かけました。劇場は満員御礼状態。驚きの初体験は、どこからか、奇妙な音が・・その正体はまちがいなく、前の席の老婦人のいびき。もう椅子に沈み込んで熟睡なさってました^^; どのぐらい起きていらしたのかしらねぇ・・しっかりとあのバカ高いプログラムを抱えていらっしゃいましたから、プログラム付きのお客様なのかも。居眠りはいいけど、いびきは・・ 本人には聞こえないわけですから、怖いですね。気をつけなくちゃ・・ と、自戒、自戒です。

録音や映像で浴びるほど鑑賞してしまっている曲に、ありがちなんですけど、テンポに慣れるのにちょっと時間がかかりました。この曲で浴びていたのは、あの映画です。一昨年秋に見たマクヴィガー演出のほうが主張が明確でおもしろかったような記憶。一方、音楽、特にフィナーレ、騎士長登場後の音楽は、今回は、期待以上に、もの凄くデモーニッシュな響きで、ぞくぞくしました。

晩餐の場面は、喜劇らしい遊びもあって、おもしろく、客席から笑いも起こり楽しかったです。墓場の場あたりから後、レポレッロは意識的に観客を巻き込もうと頑張っている雰囲気が感じられました。晩餐の場になるところ、ハプニングかどうか、暗い中を料理やワイン、果物など満載のワゴンを押して登場のレポレッロ、マスカットを一房落っことしてて、明るくなってからあわてて捜しに戻って拾い上げ、何粒かはぱらぱらと床に転げ、ひとつがゆるゆると転がってオーケストラ・ピットに落下。席が近かったのではっきりとわかりましたが、ここでまさしく傾斜舞台を証明。そう言えば、エルヴィーラ、荷物をつんだカートを押すメイド同伴で登場でしたが、この時もメイドさん、カートにしっかりストッパーをかけてました。

マスカットに戻りますと、ご主人さまにサービス中にも、もう一粒ころころと落下。もう一粒はレポレッロ、追いかけて落下前に回収。ドン・ジョヴァンニはテーブルクロスのかかったテーブルを逆さに持ち上げて登場するやら、テーブルに飛び乗って見栄をきるのはいいけど、なんだかやわそうなテーブルで、大男にのっかられて、壊れるか、落ちるかとはらはらしてしまいましたが、無事飛び降り、安全着地。テーブルも無事でした。晩餐のお料理、まずは生ガキだったようです。それから、いかにも美味しそうな鳥の丸焼き。レポレッロ、一生懸命ナイフで切り分けてました。切り分けたうち骨付きをつまみ食い。サービスついでにワインもお先にしっけい。つまみ食いの残りをナプキンに包んで、指揮者に放り投げ、指揮者、見事キャッチ、その後、指揮者はワインも召し上がり、なかなか次の演奏の指示を出さないで、笑いをとるというおふざけあり。かきくどくエルヴィーラの前に再びカタログを広げて見せたり、カーテンコールでは、たぶん鳥の骨入りナプキンを指揮者から投げ返されたりと、レポレッロ大活躍。

ドン・オッターヴィオ、ドンナ・アンナ、ドンナ・エルヴィーラ、この順にと言ってもオッターヴィオとアンナは同等ですが、各人の長〜いアリアは、かなり退屈。私の問題もあるでしょうが、やはり起伏に欠けるし、緩急不足かと思います。私にでさえ、もっといい気分で聴かせてくれる演奏はいくらもありますから・・ お芝居を中断することはなはだしいよなぁ・・なんて思いながら、我慢してました^^;; このいくつかのアリアの部分だけはオペラ・セリアになってしまうというか。

話は戻りますが、舞台、最初の場面はもたついてましたねぇ・・騎士長とドン・ジョヴァンニの果たし合いも・・ ドン・ジョヴァンニが小さなナイフを出して、それを騎士長が奪って、騎士長が死ぬ、という経緯だったように見えましたけど。自分の手にあるナイフで、自分が刺されちゃったってことらしい・・ あそこは派手でかっこいいチャンバラを期待するのに、いきなりがっくりさせられました。倒れていたドンナ・アンナは立ち上がるときスカート下が絡まったのか、しきりにスカート直していて興ざめだし・・;;; 騎士長は死ぬ前からゾンビみたいに生気がないし・・ この場面、モネ劇場のは、ドン・ジョヴァンニはかっこよく、ドンナ・アンナは美しく、痛ましく、動きも音楽にぴったり乗って決まってました。

そういえば、このドン・ジョヴァンニ、やたらにあの小さなナイフを脅しの道具として取り出すんです。マゼットも喉元に突きつけられてました。

ドン・ジョヴァンニの目玉アリア、シャンパンの歌は派手なパフォーマンスも含めてど迫力。歌手は、テレビで見てけっこう気に入ったエクサン・プロヴァンスのドン・ジョヴァンニのタイトル・ロールだったのも行く気になった一因。エクサン・プロヴァンスのドン・ジョヴァンニも品があるという扱いではなかったかもしれませんが、今回のドン・ジョヴァンニ、ならずもの的扱いだったようで、相当な無頼漢ぶりなんですが、なぜか、どうもドン・ジョヴァンニの性格がなかなかつかめず、もどかしい気分。衣装も、私好みではなかった・・ 

ツェルリーナ、歌も外見も気に入りました。可愛くて、それを充分自覚している女の子という感じ。マゼットにはもったいないわってちょっとだけ思っている・・ マゼットもそういうマゼット。ちょっとだけ自信がないけど、力と金に物を言わせる奴に負けられるかって・・いかにも朴訥でドジな田舎の若者。このカップルの場面、お芝居的にとても良く描かれていたように思います。ツェルリーナの「ぶってよ・・」とか「薬の歌」とか、好きじゃないんですけど、今回はこれが一番よかった。

マゼットがレポレッロの振りしたドン・ジョヴァンニに痛めつけられる場面のちょっと前、村人たちに囲まれたドン・ジョヴァンニがお前がマゼットだなと言いながら指差すんですけど、違う人を指してて、あれれでした。初日は背の高い代役だったそうですから、一瞬、混乱しちゃったのかしら・・ お前は残れ、ではちゃんと正しいマゼットを捕まえたのでほっとしました。

あ、そうそう、もうひとつ意外でおもしろかったのは、1幕フィナーレ、ツェルリーナ拉致がばれて、迫りくる危機から主従がどうやって脱出するかという場面。今回は、なぜかほんとに手に汗を握りつつ、オーケストラ・ピットに飛び降りて、客席を走り抜けるか、それとも群衆に突進、恐れをなした群衆がぱっと左右に割れるか、それとも、つまらないけど、舞台の左右どちらかに走り込むのかなどと考えていました。なんと、舞台前面、主従が左右に別れたと思った瞬間、何かをさっと床から持ち上げ、いきなり舞台奥に向かって駆け抜けました。二人が持ち上げたのは、長い棒。群衆、危険を察して、たまらず床に伏せ、主従は舞台奥に逃げ去ったのでした。タイミング、間違ったら、えらいことですね。角材みたいに見えましたけど、実際は柔らかいものなのかしら・・・

以上、とりとめのない感想でした。


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オデュッセウス

バレンボイム/リンデンの公演がなかなかブログに取り上げられず、オデュッセウスにとってこれが初めてです。オデュッセウスは1997年の公演でバレンボイムの指揮する『魔笛』に大感激しましたので、この公演も興味あったのですが、さすがに高額なので『トリスタン』のみにしました。『モーセ』も行きたいのですが……。
アレクサンドル・ヴィノグラドフが出ましたか!?ヴァラシエンヌさん、元気にしているかなぁ~?
by オデュッセウス (2007-10-03 21:05) 

Sardanapalus

情景が浮かんでくるような素敵なレポートありがとうございます。私は魅力的な男声陣を聞きにいけずに残念です。イケメン主従コンビだけでなく、魅力溢れるツェルリーナと朴訥なマゼットのカップルも良さそうですね。今回の演出はレポレッロが大活躍なのですね?ミュラー=ブラッハマンはこの演出でレポレッロを何度も歌っていますから、多少のハプニングはお手の物なのでしょう。ぶどうのくだり、ぜひ見てみたかったです(^^)

>テーブルに飛び乗って
ジョヴァンニはテーブルに乗るものなのでしょうか?ト書きに書いてあったりして(笑)やわそうなテーブルに大男…想像してニヤニヤしてしまいます。マッテイのジョヴァンニはエクスの演出ではろくな晩餐が食べられませんでしたけど、今回は前菜からしっかり食べられて良かったですね♪

>ドンナ・アンナは立ち上がるときスカート下が絡まったのか、しきりにスカート直していて興ざめ
うーん、こんなときに身づくろいしている場合じゃないでしょう…(^_^;)この出だしがテンポよく進んでくれると物語にも入り易いのに、騎士長の落命の仕方といいちょっと期待はずれで残念ですね。私もここには派手な殺陣がほしいです。
by Sardanapalus (2007-10-03 23:04) 

ななこ

いらしたんですね!

鋭い観察にえ~? そうだったっけ?・・・です^^
私なぞマッティのパワーにクラクラであまり周りのこと覚えていません。
でも、回を重ねるごとにのってきてる感じですね。
リンゴや牡蠣までは覚えてますが、マスカットは初日はテーブルにのってただけだったような・・
ライモンディのドンジョヴァンニとは全く違う生身のイケメンドンジョヴァンニだと思いました。
ナイフをちらつかせるのはちょっと嫌でした。

散歩道の花に留まる蝶、美しいですね!
ツマグロヒョウモンはもともと南方系の蝶です。1980年頃までは近畿以南にしかいなかったそうです。
温暖化と園芸植物(食草)の広がりで北関東にまで生息地を広げてきてるそうです。
by ななこ (2007-10-04 00:43) 

keyaki

左サイドの写真、拡大してみて、わぁお、ウソみたい、キバナコスモに保護色みたいだけど、アゲハの一種なのかしら?

ペーター・マッティのドン・ジョヴァンニって、エクスの映像でしか見たことがないけど、まったく、本当に、まったく印象に残ってません。
みんなで、積み木遊びしていたっけ......です。
髪の毛サラサラのただの兄さんで、カリスマ性とか皆無でしたけど、最近はああゆうのが流行るんですかね。どんな声だったかも印象に残ってない、私、一回聞くと、だいたい声の特徴をつかめるんですけど..

>各人の長〜いアリア
これをたいくつさせないで聞かせるのはなかなかないような.....

マスカットですか。テーブル用ぶどうって、庶民には縁のないものだったようですけど、食べ物だけは、貴族風ということなんですね。チグハグ感がたまらないってやつでしょうか。
どこまでが演出か、ハプニングか毎日見に行かないとわからないってとこですね。

ちょっと間違い訂正もあって、削除したら、ななこさんのコメントが...
>ツマグロヒョウモン
ありがとうございます。勉強になりました。ウチの庭は猫の額なのに荒れ放題ですが、レモンの木とかブッドレア、庭の外には楠木がありますので、アゲハがよくきます。
by keyaki (2007-10-04 00:54) 

euridice

オデュッセウスさん
記事にも書きましたが、2幕後半は、ほんとに身体がぞくぞくとする感じで、強烈でした。

ななこさん、keyakiさん
>ツマグロヒョウモン
ななこさんのブログで、写真を見たばかりだったので、いるいるって・・携帯では撮影無理かなと思ったんですけど、お食事に夢中なのか、ほとんど動かないんです^^l

>ライモンディのドンジョヴァンニ
生では見られませんでした。ライモンディ曰く、若いときにするべき役、つまり美しい役だそうですからね^^; あの映画と、他に舞台映像を見ました。

ドン・ジョヴァンニ、多くの女性が嫌でも惹き付けられ、誘われれば抗しがたい男に見えるべきだと思いますが、そこは、女性の好みも人それぞれ、ドン・ジョヴァンニ役も様々なタイプがあって、世界中の劇場に座ることもでき、映像もいっぱいの今は、よりどりみどり、自分好みのジョヴァンニが、一人といわず複数でも持てるというものです。私、一番はやっぱりライモンディ^^!!

Sardanapalusさん
>派手な殺陣
これがないと相当寂しいですね。加えて、モネのときのように、ドンナ・アンナとのああいう絡みがあると、おもしろさ倍増ですね。
by euridice (2007-10-04 08:30) 

TARO

おや、ヴィノグラドフがマゼットだったんですか。ヴァランシエンヌさんには嬉しいビックリだったことでしょうね。
アンナやエルヴィーラのアリアが退屈というのは、曲に対する好みの問題もあるにしても、やはりバレンボイムのテンポ設定の問題?それとも歌手の力量不足ということでしょうか。その両方?
シルヴィア・シュヴァルツは気になっていた歌手ですが、今回は「ドン・ジョヴァンニ」聞けないので残念です。一番聞きたいのは「モーゼ」なんですが、日程的に無理かも。「トリスタン」は大丈夫そうな感じなので、なんとか無理をしても行きたいなと思っています(チケットは入手済み)。
by TARO (2007-10-04 14:10) 

euridice

TAROさん
>アンナやエルヴィーラのアリア
+オッターヴィオ
>歌手の力量不足
かな??? 指揮者のテンポについては私にはわかりません・・

>チケットは入手済み
じゃあ、行かなくちゃ!
今回はそういう気分になったので、私も行く予定です・・
そろそろ機会は少ないと自覚・・の年齢かも^^;;;
by euridice (2007-10-05 08:56) 

ヴァランシエンヌ

ご無沙汰してます。
ヴィノグラドフがマゼット、ということで、名前出して下さって、ありがとうございます。
来日公演には手を出すまいと決めていたのに、嬉しいビックリ、でも初日はコケてしまって…で、結局最終日にも行く羽目に。
晩餐の場面は最終日のほうが、断然面白かったです。

朴訥なマゼット、多分そんな感じなんだろうなぁと予想していたのですが、まさにedcさんのレポの通りでした。嬉しかったです。

UPされてすぐに読ませて頂いていたのですが、自分が観てくるまでは落ち着かない…と思って、コメント残さず、失礼しました。
《トリスタン》にも行かれるのでしょうか?私はもう、そちらまではとても手が出せません(^^; 
レポ楽しみにしています。
by ヴァランシエンヌ (2007-10-09 21:14) 

euridice

ヴァランシエンヌさん
久しぶりです。
>晩餐の場面
最終日の晩餐、「刺身の船盛り」しかも、
指揮者が舞台に運んできたとか。
見たかった・・
by euridice (2007-10-10 08:15) 

しま

こちらでは初めまして。
TBの件ではご迷惑をおかけしてすみません。
試しに打たせていただいたら、こちらからウチへのTBは成功した模様です。
うーん?
承認制にして手動にすれば可能かなという気もしますが、そこまでネットに労力を割きたくないし~、悩みます。

シャンパンのアリアは、初日がとてもノリノリで良かったと聴きました。
ワタシが行った6日は、悪くはない(というか、上手い)んですけど、「並みだな~」という印象でして。
とはいえ、このアリアでワタシを「すげー(*゚Д゚)!!」と唸らせた歌手はおらんので、こんなもんかなという気もします。
窓辺のセレナーデは、歌唱じたいはまずまずでしたが、魅力はこっちのほうがありましたです。シュテキ~(*´Д`)
by しま (2007-10-14 11:21) 

euridice

しまさん、いらっしゃいませ。
>TBの件
こちらこそお騒がせしました。リンクで良しとしましょう。
そちらからのTBありがとうございます。
by euridice (2007-10-14 21:03) 

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ベルリン国立歌劇場《ドン・ジョヴァンニ》/東京文化会館 10/6 其の弐 主にマッティについて(諸書別館 -*-とはずがたり-*- 2007-10-14 11:07)

 コチラに続きまして、ベルリン国立歌劇場の《ドン・ジョヴァンニ》の感想レポです。  ドイツ系は「時代設定読替え」や「前衛的」なものが多いから気をつけたほうが良いよと事前に脅かされていたのですが、トーマス�

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