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サロメ ドレスデン来日 [劇場通い]

仕事帰りに余裕で寄れるし、急いで帰る理由もなし、というわけで、「タンホイザー」や「ばらの騎士」のおよそ半分の長さにしては値段の差が無さ過ぎだし、あの「モーゼとアロン」と同じ演出家だから音楽との相乗効果、あまり期待できないなぁ・・と思いつつ、また上野に行ってしまいました。こういうのって勢いですね。残念ながらか、幸いか「ばらの騎士」は都合のいい日が皆無で、パス・・

「サロメ」を劇場で鑑賞するのは4度目。2度は新国立劇場の同演出、シーズン違い(2004年2月2002年5月) そして、新日本フィルの定期演奏会(2004年3月)。どれも好きな録音や映像を超えるものではなかったのですが、まあ、今回も残念ながらそういう結果。

舞台は写真で見るよりはるかに急勾配。真ん中の意味不明の囲まれた部分の周りを急傾斜の回廊が巡っています。回廊は向かって右に、そして奥にのぼり、中心部分の向こう側は見えません。全体が舞台中央に鎮座した物体で周囲は真っ暗な奈落。物体の縁はプールの縁のように見えます。一カ所にプールに降りるためのような梯子がかかっています。ここのところがヨカナーンの定位置のようで、幕が開くと、観客のほうを向いてヨカナーンがなんとなく不安定な感じで腰を掛けています。本来、彼は古井戸の中に捕われているのですから、なぜ奈落の底にいて見えない状態にしないのか・・??

演出家は台詞と見えるもののずれに不感症なのでしょうか。そのずれさえ程度を超えていなければ、今回のような衣装とか舞台装置は別にかまいません。ただ今回のは傾斜がきつすぎて、落ち着きません。何よりもサロメが美しく動けていないのが気になりました。ヘロディアスは衣装も似合って、動きも決まって、よかった。サロメは胸から腹あたりのぶよぶよ感が強調されて美しくない。客席に背中を見せて勾配を駆け上がる姿が無様。そして、新国立劇場の元帥夫人@ばらの騎士の素敵な奥様ぶりの印象が強く残っているせいか、若い娘ではなく既婚女性に見えてしまう。奥様に見えるサロメはたとえ美人でもちょっと・・。髪型や衣装が問題だったのではないかしら・・。

台詞と見えているもののずれの最たるものは、ヨカナーン。若い精悍な預言者に見えないのは許すとしても、何故にプールの縁みたいなところに不安定にひっかかっていなくちゃならないのか。何故に回廊を歩き回るのか。ヨカナーンの、その声に惹かれ、彼を見たがるサロメの激しい気持ちとやっと目にした彼に憧れ、求める狂おしさが虚しい。だから当然、ナラボートの存在も、その死も虚しい。とにもかくにも、ヨカナーンの声は井戸の底から神秘的に響いてくるべきです。目の当たりにしながら、「見たい、見せて」「見ることは禁じられている」云々はないでしょう。

「七枚のベールの踊り」は踊りとして演出されていません。サロメが、僕の場所と言わんばかりにプールの縁にとまっているヨカナーンの両手を、ヘロデのネクタイやカマーバンド(かな?)でプールに降りる階段の手すりにしばりつけたり、ヘロディアスが自分のストッキングを脱いで、さるぐつわをかませたり・・・サロメは回廊を駆け回ったあげく、ヘロデの服を脱がし(さすがに上着、チョッキ、ネクタイ、カマーバンド、サスペンダーをはずすところまで)、ヘロディアスはサロメに負けじと、なのか、代わりになのか、優雅に踊り、サロメとヘロデはついに事に及ぶ。要するに「踊り」というのは言葉の綾で、ヘロデはサロメの身体を求め、サロメはその代償としてヨカナーンを望んだということ。それはそれで説得力がありますが、こうも直裁的に見せつけられては、気分が悪い。そこまでして得た代償、痛ましくて、銀の盆に載ったヨカナーンの首ではなく死体(回廊に横たえ、白い布をかぶせ、サロメはそのシーツに潜り込む)を得た彼女の歓喜の叫びも、こちらの快感にはなり得なかったような・・・ あの女を殺せ!と言いつつ、ヘロデ自ら斧をふるう幕切れもどうかと思います。

音楽と舞台の一体感、相乗効果が得られないので、最高の舞台!という感動、快感は味わえませんでした。音楽、管弦楽部分は良い音だったけど、はまりきれないような感じが・・・ そして、ヨカナーンは、声もなんとなく荒れ気味で美しくないし、旋律線が魅力的に際立つということがなかった・・・ 特に期待の好きな旋律が・・・ もうひとつの期待部分、ナザレ人の旋律も聞こえなかった。そして、ユダヤ人たちやナザレ人たち、兵士たちによる重唱部分の妙が感じられず、ヘロディアスは目にはとてもよかったけど、声の突抜け度がちょっと欲求不満。冒頭のナラボートと気色悪いひげをはやした小姓の歌もあまり美しくなくて、残念でした。音楽を巧みに視覚化して見せて欲しいのですが、そういう演出にはなかなか出会えないようです。

リヒャルト・シュトラウス:サロメ
ファビオ・ルイジ指揮 ドレスデン国立歌劇場管弦楽団
ペーター・ムスバッハ演出
サロメ:カメラ・ニールント
ヘロデ:ヴォルフガング・シュミット
ヘロディアス:ガブリエレ・シュナウト
ヨカナーン:アラン・タイタス
ナラボート:マルティン・ホムリッヒ

ナラボート以外は全員新国立劇場で出会った歌手たち。ヘロデは同じ役で、ヨカナーンも同じ役とファルスタッフで、サロメは元帥夫人@ばらの騎士、ヘロディアスはブリュンヒルデ@神々の黄昏とサントゥッツァ@カヴァレリア・ルスティカーナで。ドレスデン来日の「タンホイザー」ではシュナウトはヴェーヌス、タイタスはヴォルフラム。ナラボートのホムリッヒは、印象的なワルターでしたが、ナラボートはあまり魅力的ではありませんでした。

好きな旋律:
左)ヨカナーン:お前を救える人がひとりだけいる。探しに行くがよい。その人はガリラヤの海に浮かぶ小舟に乗り、弟子たちと話している。ガリラヤの岸辺にひざまずき、その人の名を呼べば、その人が現れるだろう。名を呼ぶ者のもとに必ず来てくださる。そして、足下にひれふし、罪が許されるよう請い願うのだ。
右)ユダヤ人、ナザレ人、ヘロデ、ヘロディアス、ヨカナーンの声が入り乱れての神学論議の大騒ぎの中のナザレ人の旋律。救い主が来た。そして至る所で奇蹟を行っている。ガリラヤの婚礼では水を葡萄酒に変え、別の場所では病人を癒し、死者を生き返らせたと話すところ。

  


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コメント 11

keyaki

プールサイドに腰掛けたヨカナーンですか.......
まあ、古井戸から出てきて、歌詞の通りのヨカナーンはなかなかいませんが、でも.....どんなのが出てくるのかというのが、一番の楽しみなのに、それもないし、サロメの踊りもないとは、残念!でしたね。
小さな写真でも、確かに年増のサロメにしか見えませんね。
by keyaki (2007-11-28 15:50) 

euridice

^^; はじめから、つなぎ作業着の、あれがヨカナーンか・・は確かにテンション下がりました・・ それに、新国とこないだのから期待はなかったし・・

>年増のサロメ
でしょ? ですよね・・;
by euridice (2007-11-29 07:45) 

ななこ

頭の中にあるこのオペラのこの上なく官能的な音楽と今回上演の写真がなんとも一致しません;;
初演オペラハウスとしての伝統も誇りも格式もかなぐり捨ててしまってるように思えます。

音声クリップのヨカナーンの「その人はガリラヤの海に浮かぶ小舟に・・・」のところをこんなにポルタメントつけて情緒的に歌う歌手は誰でしょうか?
私の記憶の中にないような・・・?
ヨセファンダムやヴェヒターではないですね?
映像からですか?
とっても素敵です。
by ななこ (2007-11-29 12:59) 

ななこ

何度もスミマセン;;
カラフルな小菊がまぶしいです^^

私は自分の庭の色を限定してしまうところがあるので、こういう色遣いを見ると「羨ましい~」と思います。
寄せ植えで一度作ってみようかしら?
by ななこ (2007-11-29 13:08) 

オデュッセウス

そうですか、『サロメ』も行きましたか!?オデュッセウスが大好きなドレスデンのオケが演奏するR.シュトラウスも聴きたかったのですが、今回は『タンホイザー』を聴いてもういいかな、という気持ちになってしまいました。『ばらの騎士』か『サロメ』のどちらかには行くつもりだったのですが……。
ドレスデンは次回の来日公演に期待します!!
by オデュッセウス (2007-11-29 20:55) 

euridice

ななこさん
>音声クリップのヨカナーン
>ヨセファンダム だということですよ〜〜^^;
同時期の正規録音CDがゆくえ不明で確認できないんですけど、
記憶では、歌い方、ちょっと違うような印象です。クリップは
1978年ザルツブルグ音楽祭のライブ、ラジオ放送だそうです。
配役は説明書きによればEMIのCDと同じです。

>カラフルな小菊
散歩道の垣根もなにもない庭先に咲き乱れていました。
遠目に見て、畑の道などにもたくさんあります。
by euridice (2007-11-30 07:13) 

euridice

オデュッセウスさん
>もういいかな
たぶんそういう演奏でした・・ 私としては
突き抜けたものは感じられませんでした・・けど、
みっつのうちでは「サロメ」が一番良かったというコメント、
散見します。CDなら最高だろうみたいな意見もありました。
でも、いくら生演奏とはいえ、見なければ良い公演というのは
どうかと思います。しかも、あのお値段・・`ε´)
by euridice (2007-11-30 07:27) 

ななこ

CDの正規録音は音楽祭に先立って別に行われたものなのですね。
同じ時期、同じキャストでもこんなに違うのかと思いました。
美しい声で端正に歌う歌手という印象のファンダムがライブでは十二分に個性を出してると感動しました。
カラヤン美学も舞台では一糸乱れずというまでは徹底できないようで、それがライブの魅力でもありますね。
by ななこ (2007-12-01 14:57) 

euridice

ななこさん
>同じ時期、同じキャストでもこんなに違うのかと思いました。
やはり、相当違いますか。
一回、一回、全く同じということはないに決まってますけど、
ここまで印象が違うのは、ちょっと驚きでした。
>ライブの魅力
ですね。
他にもネットのお陰で、正規スタジオ録音の関連公演のラジオ放送録音が聴けることがあって、とても興味深いです。
by euridice (2007-12-02 07:28) 

サロメは観ていないのですが、今回のドレスデンは、すごーくいい!というのがなかったのかも知れませんね…
by (2007-12-05 22:58) 

euridice

gonさん
来日に行った回数は数えるほどですけど、なかなか
>すごーくいい!
という経験は難しそうです。

>すごーくいい!
私にとっては、ポーランドのオテロとボローニャのトスカが筆頭かな?
by euridice (2007-12-06 07:44) 

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