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フンパーディンク「ヘンゼルとグレーテル」メトロポリタン・オペラ [オペラ映像]

NHK-BSハイビジョンでメトロポリタン歌劇場のライブビューイングを放送中です。
「ヘンゼルとグレーテル」は2008年10月9日(木)午後8:00~。ちなみに、8日(水)は「マクベス」、10日(金)は「連隊の娘」、7日(火)は「ロメオとジュリエット」でした。

今年最初のメトロポリタン歌劇場ライブビューイングだったようです。こちらのブログの記事で知りました。昨年はNHKがせっせと放送してくれたのに、今年はなぜかまだ一度も放送なしのようです。見逃したわけでもなさそうです。このオペラは1980年代のがレーザーディスクで出ていました。子ども向きということなんでしょう。どちらも英語上演(原語はドイツ語)です。
  

もともとグリム童話のひとつですから、日本でもお話を知っている人が多いのではないでしょうか。子どものころ、いつの間にか触れていると思います。ヘンゼルとグレーテルが何度も森に置き去りにされて、毎回こっそり上手に目印をつけて家に戻るのに、最後にはパン屑を落としていったので、小鳥に食べられてしまってついに道に迷ってしまう・・という経緯が子ども心にとても印象的でした。オペラではこういう経緯は取り入れられていません。両親が子どもを捨てるのではなく、ちゃんとお手伝いをしなかった子どもたちに怒りを爆発させて、大事なミルクの壷を割ってしまった母親が、逆上して、危険な夕方、森に野いちごつみに行かせてしまう。子どもたちは迷子になり魔女の家を見つける。子どもたちは魔女をオーブンで焼き殺し、お菓子にされていた大勢の子どもたちが生き返る。子どもたちを捜して両親がやってくるという穏健なお話に変更されています。

当然ながら、1982年の公演のほうが子ども向けのお話らしい、ごく普通の絵本を見ているような演出です。ブレーゲン・グレーテル、ほんとに可愛いです。シュターデのヘンゼルはとても品のよい少年ぶり。お菓子の家が森の中にあって、魔女は定石通り、ほうきにまたがって空を飛びます。なんとカーテンコールでも!みんな大喜びです。

2008年の演出は現代ホラー風、あるいは「本当は怖いグリム童話」風。刺激的で生々しい。ちょっと悪趣味が過ぎるような気も・・。真っ赤な口の中のケーキとか、ナイフとフォークの添えられた血のついた白い大皿が描かれた幕(客席から喚声があがりました・・歓声じゃなかったですよ〜〜さすがに)とか、とってもリアルな子どもの形をした焼き菓子からぽろりと落ちたのを拾ってグレーテルが悲鳴をあげる、まさに人の手じゃぁ〜〜とか、真っ黒こげというよりよく見るとまさに彼女の体型そのまんまにこんがり焼き上がった魔女の丸焼きをみんなで囲んで、ナイフとフォークでテーブルをたたく・・とか、(この辺で気分が悪くなってきました・・)夜眠れなくなる子どももいそう・・なんて思うのは老婆心でしょうか。最近の子どもはこの程度は平気なのかな? そして、食欲というか「食べる」ということがものすごく強調されています。魔女がせっせと作るヘンゼル肥満化食は、まさしくジャンクフード。中世の水責めの拷問道具みたいなじょうご付きホースでヘンゼルの口に流し込もうという作戦ですから、ある意味、強烈なブラック。
冒頭の母親の貧困にあえぐ姿は、最近読んだ岩波新書「ルポ貧困大国アメリカ」を思い出させられました。子どもを抱えて『いかに餓死せず生き延びるか』が日々最大の問題という層が一千万を越すとか。大飢饉にみまわれたヨーロッパの実話的昔話をそのまま現代アメリカの実話として通用させているという感じです。原語の歌詞がどうなっているのかなどは認識していませんが、ヘンゼルが食べさせても食べさせても太らない(指の代わりに小枝を差し出された、目が悪い魔女が誤解するわけですが)のに業を煮やした魔女の台詞はなかなか皮肉がきいています。ヘンゼルもグレーテルもほんとに恐怖におののいています・・大熱演のラングリッジ魔女、昔話の魔女というよりは、現代の猟奇的快楽殺人鬼に見えてきます・・;;

フンパーディンク:ヘンゼルとグレーテル メトロポリタン歌劇場
英語歌唱1982年2008年
指揮トーマス・フルトンウラジミール・ユロウスキ
演出ナサニエル・メリルリチャード・ジョーンズ
ヘンゼルフレデリカ・フォン・シュターデアリス・クーテ
グレーテルジュディス・ブレーゲン クリスティーネ・シェーファー
お母さんジーン・クラフトロザリンド・プロウライト
お父さんマイケル・デヴリンアラン・ヘルド
魔女ロザリンド・エリアスフィリップ・ラングリッジ

  

関連記事:フンパーディンク「ヘンゼルとグレーテル」チューリヒ1998年


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コメント 20

サンフランシスコ人

「子どもを抱えて『いかに餓死せず生き延びるか』が日々最大の問題という層が一千万を越すとか。」

数千万です。


by サンフランシスコ人 (2008-04-13 02:46) 

euridice

>数千万です。
ありがとうございます。

上記のルポによると
飢餓状態を経験した成人:2270万人
飢餓状態を経験した子ども:1240万人
計:3510万人(2005年アメリカ農務省データ)
とあります。きっと増えているだろうとは思いました・・
by euridice (2008-04-13 08:12) 

YASU47

edcさん、
このMET2008年版の一部残虐な表現には辟易としましたが、全体の演出と色彩のセンスの良さには感心しました。見る人がブラックを演出をそれとして受け取れれば良いのでしょうか?(でも、子供には無理だよなぁ)

edcさんがこの映像をすでに見られるというのが驚きでした。しかし、当方ではビデオクリップが作動しません(Quick Time Playerは装備しているのに・・・)。

1982年版にも興味が惹かれます。ブレーゲンは「愛の妙薬」や「仮面舞踏会」ですっかりお気に入りとなりました。当時のMETのアイドルだったのでしょうね。


by YASU47 (2008-04-13 13:06) 

euridice

YASU47さん
TBありがとうございます。

>全体の演出と色彩のセンスの良さには感心しました
同感です。
この演出、小さい子にとってはどうなのか気になるところですね。

>ビデオクリップが作動しません
そうですか・・どうしてでしょう?
QuickTimeバージョン 7.3.0(Mac)で作っています。
windowsXPでも動作確認してみたところ、ちゃんと動きました。
QuickTimeのバージョン7以上が必要だと思います。
読み込みに多少時間がかかるかもしれません。
by euridice (2008-04-13 17:01) 

ななこ

わ~ とても子供には見せたくない映像ですね。
こちらのクリップで見せていただくだけなのですが、この刺激的映像感覚は好むとか好まざるに関係なくよく目にするアメリカのテレビドラマや映画(CSIシリーズetc)の世界。
最初は目を背けていましたが、慣れっておそろしいもので最近はより過激になってるのに、平気になってしまったのがこれまた怖ろしいです。
でも、善悪判断つかない子供(と限らず大人にもいるわけで)が見ると虚構と現実の判断つかなくなって、最近の猟奇的事件多発に無関係とも思えません。


ホーレンダーウィーン国立総裁の言われる「ドイツ語圏特有の病気」が比較的保守的だったアメリカのしかも子供も見る機会の多いオペラにまで・・・というところが問題だと思います。

1982年版は主役二人が本当にかわいいですね。
視覚的にも音楽的にも優れてると思います。
この映像大好きです。
ショルティの映画版が指揮者の振る姿も含めて歌手も大御所ばかりで音楽的には最高だと思いますが、なんだか凄く重い曲を聴いてるようでこのオペラのイメージにそぐわない感なきにしもあらずです。

チューリヒのは未視聴ですが雰囲気は分かります。
面白そうですね。

>「ルポ貧困大国アメリカ」
読んでいませんが、最近夫と何となく見た映画に妻に逃げられ幼児を抱えた黒人男性が夜寝る場所もなく教会の慈善奉仕の宿と食事の恩恵にあずかるための行列に加わる場面がありました。
結局はアメリカンドリームで、その後定職について起業家となり大成功というお決まりの映画だったのですが、あの大国(とまだ思っている)でその日食べることにも困窮する層があれだけいるという現実には正直驚きました。(実話に基づいてる映画でした)

METライブビューイングのテレビ放送はいつでしょう?
待たれます。

by ななこ (2008-04-14 08:22) 

YASU47

edcさん、
Quick TimeのV.7に入れ替えたら見ることが出来ました。全編の映像版が早くリリースされるといいなぁ。丸焼けシーンを除けば洒落た演出ですし、何といってもシェーファーが素晴らしいのです(^o^)♪
by YASU47 (2008-04-14 22:10) 

euridice

ななこさん、YASU47さん
テレビ放送あるといいですね。
小さい子どもにはどうかと思いますが、
なにかと興味深い演出、演奏だと思います。

>結局はアメリカンドリーム
そうなんですね・・外タレと言われている在日アメリカ人の中にも
そういう人いるようですね。これはジャパンドリームかな^^?
最悪の状況でもそれはやはり自己責任という意識があるんですね。努力すれば
頑張れば上昇できるはずだって・・のたれ死にする直前に教会の慈善がとりあえず救ってくれちゃう・・的はずれかもしれませんが、なんだか徳川家康の「生かさぬよう殺さぬよう」を思い出しました。

YASU47さん、
>Quick TimeのV.7に入れ替えたら見ることが出来ました
やはりそれが原因でしたか。よかったです。
by euridice (2008-04-14 22:50) 

YUKI

ビデオクリップ、見せて頂きました!(^o^)

2008年の方の映像・・・本当にグロテスクな感じ受けますよね。。。(^^;)
茶色い人形の様なものはお菓子にされた子供でしょうか?
ちょっと怖すぎます!

魔女を男性歌手が歌っているのですが・・・
魔女と言うより・・・どういえばよいのか・・・ちょっと口ではいえない様なキャラクターに仕上がっている気がしましたねぇ。(^^;)
by YUKI (2008-04-16 16:04) 

euridice

YUKIさん
見てくださってありがとうございます(^o^)
>グロテスク
ですね・・
>菓子にされた子供
リアルすぎ!

>ちょっと口ではいえない様なキャラクター
好き嫌い、善し悪しはおいておいて、
とにかく真に迫ってますね・・巧いものです。

by euridice (2008-04-17 08:03) 

サンフランシスコ人

来シーズンのメトロポリタン歌劇場ライブビューイングは11回。

http://www.sfgate.com/cgi-bin/article.cgi?f=/n/a/2008/04/22/entertainment/e142857D62.DTL&hw=metropolitan+opera&sn=002&sc=597
by サンフランシスコ人 (2008-04-24 04:02) 

euridice

今年はテレビ放送がないみたいで残念です。
by euridice (2008-04-24 07:12) 

サンフランシスコ人

メトロポリタンの「蝶々夫人」の映像は珍しいです。 アメリカの日本ブームというのか、昨夜サンフランシスコの近鉄のれん街は混んでいました。


by サンフランシスコ人 (2008-04-24 08:11) 

euridice

>サンフランシスコの近鉄のれん街
へぇ〜近鉄のれん街なんて場所があるんですか・・

>メトロポリタンの「蝶々夫人」の映像
ドマスの蝶々さんなんですね。同じ歌手の蝶々さんをコヴェントガーデンだったかの映像を見たことがあります。なんだか狐の嫁入りみたいな蝶々さんでした。
by euridice (2008-04-24 23:44) 

サンフランシスコ人

「コヴェントガーデンだったかの映像を見たことがあります。」

http://www.operaomaha.org/seasonproductions/madamabutterfly/index.asp#

オマハ歌劇場のデザイン方が格好いいですか。
by サンフランシスコ人 (2008-04-25 10:35) 

euridice

>オマハ歌劇場のデザインの方が格好いいですか。
オマハ歌劇場のも金子潤氏なんですね。
デザイン画を見る限り、あんまりいいとは思いません。

>コヴェントガーデンの映像
デザインは格好良いとも思いませんが、別にそれなりで
気になりません。主として蝶々さんの容貌が
「狐の嫁入り」を思わせるのです。
by euridice (2008-04-26 08:27) 

サンフランシスコ人

「デザイン画を見る限り、あんまりいいとは思いません。」

ウォール・ストリート・ジャーナル(米国を代表する経済紙)が絶讃しました。



by サンフランシスコ人 (2008-04-26 09:11) 

euridice

オリエンタリズムでしょう。
by euridice (2008-04-27 09:27) 

サンフランシスコ人

「へぇ〜近鉄のれん街なんて場所があるんですか・・」

サンフランシスコのオペラハウスからタクシーで約5分です。
by サンフランシスコ人 (2008-05-15 08:40) 

松本ポン太

はじめまして。
シュターデのほうはレーザーディスクを持っていて、むかしよく観ました。
今はプレーヤーが壊れて、長いこと観ていません。
by 松本ポン太 (2011-09-11 21:10) 

euridice

松本ポン太さん、はじめまして。
いろいろなオペラを次々見て感動していたのは、私もレーザーディスクの時代でした。レーザーディスク、あっという間に消えて、オペラ歌手も世代交代が進み、演出の時代は続き、もう夢中になるような映像もこのところ全然ない状態です。またそういう新しい映像や録音、舞台に出会いたいものです。
by euridice (2011-09-22 10:41) 

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